京野菜には、いわゆる地大根がたくさんあり、なかでも有名なのが聖護院だいこん。約 170年前、左京区聖護院の農家が尾張の長大根から作り出した品種です。
苦みがなくほんのり甘いのが特徴。
大きくまんまるのだいこんは冬の味覚の代表格とされます。
長時間炊いても煮崩れせず、それでいて口に入れると舌の上でとろけるほど柔らかいので、ふろふきだいこんやおでんといった料理が一般的です。
うちの8才坊は、聖護院大根の煮物が食卓に上ると、飛び上がって喜びます。
ふわっ、とろっと口の中で広がる風味で、「聖護院だ!」と分かるそうなのです。
本当にそれぐらい、おいしい大根です。
ところで、京都の千本釈迦堂で12月に行われる「大根焚」は、師走の風物詩とも言われますが、そのときに使われる大根が聖護院大根です。
以下、「まるごと京都ぽーたるさいと」さんより引用します。
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大根焚き
厄除けをかねた京の師走の風物詩
寒さも病も湯気に消え
釈迦が菩提樹(ぼだいじゅ)の下で悟りを開いた日(12/8)にちなむ恒例行事で、鎌倉時代に同寺の三世慈禅上人が大根の切り口に梵字(ぼんじ)を書いて、魔よけにしたのが起源とされています。
材料となる聖護院大根のまるまると白く太った大根一個一個の肌に、カラメルで梵字を書くのは、お釈迦さまを偲んだものです。
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なるほど~。厄除けなのですね。
ところが、その先の以下の文章が気になりました。
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従来は丸い聖護院大根を使っていましたが、年々参拝者が多くなったことや、
お祓いをして清めた畑に新幹線が通ったり、とても大根の数が間に合わなくなりました。現在は、長い大根を使っているそうです。
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なんと!
「大根焚きといえば聖護院大根!」
と思っていたのですが、京の代表の風物詩の行事で使われる聖護院大根まで、「青首大根」に取って代わられたとは・・・。
聖護院大根、おいしいですが、スが入らないよう割れないよう、大きく育てるのは大変ですものね・・・
しかもあんな丸~いの、箱に入れてもスキマだらけで、場所とることこの上ありません。
(流通経費が割高になる)
聖護院大根、高いのは理由があるのです。
ただ、大根高くちゃ売れません。
だって、千本釈迦堂の大根焚きですら、青首大根なんですもの・・・。
(数が間に合わなくなった、とおっしゃっていますが、きちんとお代金を払ってもらえれば、そんなありがたい場で使ってもらえるのならと、京都の農家さんは作り続けていたと思うのです)
「はぁ。もう聖護院なんて作ってられへん。もう青首でええわ・・・」
と、農家さんが首をたれてしまう気持ちは重々わかります。
それでも、こうやって各地の伝統品種が、ひとつ、またひとつと消えていってしまうのを見るのは、とても寂しいことです。
そして、私たちの代で途絶えさせてしまうなんて、なんて責任重大なことをしているんだろう、とも思うのです。
だからこそ、伝統品種を細々とでも作り続けて行きたいなぁ、と思っています。
やっぱり、人が多様であるように、大根だって多様な種類がある方が、人にとっても環境にとっても優しいと思うから。
でも、農家だけががんばっても、長続きしません。
作る人、食べる人、みんなで話し合っていきたいなぁと思っています。
私たちの畑でとれる聖護院大根が、少しでもその流れに貢献しますように。
お野菜一つ一つにもこんなにストーリーがあるんやね…。。