秋のニンジン畑。

秋のニンジン畑。

「数ある農作業の中でどの作業が一番好き?」
と聞かれたら、たぶん、「ニンジンのお世話!」と答えると思います。それほど、ニンジン畑、大好きです。

何が一番好きかというと、その香り。

ニンジン畑に覆い被さるようにして作業をしていますが、その時に包まれるニンジンの香り。

風が少しある日なら、そよそよとニンジン葉が揺れるだけで、辺り全体がニンジンの香りに包まれるのです。

それは、セリ科独特の芳香。

すがすがしくさわやかで、それでいてきりっとした香り。包まれるだけで浄化されたような、そんなすきっとした気分になります。

ニンジンを切ったときに香る香りと似ていますが、少し違います。どう言ったらいいのかな、より野性的で鋭くて、グリーンでな匂いです。セリ科の原点のような香り。

また、ニンジンを切ったときは、鼻から匂う、という感じですが、ニンジン畑では、全身の皮膚が香りを感じているのではないか、と思えます。セリ科の香りに刺激されて、カラダの感覚が鋭敏になるような気になるのです。

そんな感覚を味わうことができるニンジン畑での作業が、大好きなのです。他のどのお野菜の畝からも、そういう気分を味わうことはない気がするのです。

「農」というものは生業としては、金銭的な大もうけすることは決してないと思います。こういった、お金という物差しで測ることのできない小さな小さな幸せが日常に存在すること、その日常をありがたいものだと思える暮らしであること、が大きな魅力だと思っています。

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