日本ほうれんそう。
江戸時代から高級野菜として栽培されてきた在来種です。
柔らかくて、甘みがあって、本当においしいほうれんそうです。
こちらは間引き菜、ヤングリーフです。
あまりにも柔らかくて、繊細で、一口食べると口にひろがるほわっとした香りに、わたしはメロメロです。
ほうれんそうは、ペルシア(今のイラン)で栽培が始まったとされます。その後、中国へは7世紀ごろに、ヨーロッパへは11世紀ごろに伝わりました。中国経由で日本に伝わったのは、江戸時代、16世紀ごろのこと。
ほうれんそうは、「東洋種」「西洋種」の二種類あります。
もともと日本で栽培されていたのは、「東洋種」。
東洋種は西洋種よりも、根元の赤色が強くて、アクが少ない、と言われています。アクが強い西洋種も19世紀ごろフランスから輸入されましたが、「土くさい」とあまり好まれなかったのだとか。
しかし近年は、東洋種と西洋種の交配種が主流になりました。日本の人の東洋種への「こだわり」もなくなり、東洋種のほうれんそうを市場で見かけることもなくなりました。その種自体も輸入したものがほとんどです。
ちなみに、ほうれんそうは「シュウ酸を含み結石の原因になる恐れがある」とも言われていますが、これはアクの強い西洋種のほうれんそうのことだそう。
ですので、ゆで汁をこぼした方がいいのは主に西洋種のほうれんそうのこと、だそうです。こう言われるようになったのは、西洋種との掛け合わせが主流になった近年のことなのかもしれません。
そういえば、ヨーロッパに住んでいたころ、スーパーやマーケットで見かけるほうれそうは、どれも見かけが「ワイルド」な感じで、アクも強かった記憶があります。まさに「ポパイ」な感じです!
それに比べて、この在来種のほうれんそうは見かけが繊細です。またアクが少ないので生食にも向いています。
鮮度が落ちやすく、輸送や貯蔵性に乏しいと言われるほうれんそう。「軟弱野菜」と言われるゆえんです。だからこそ江戸時代は「高級野菜」だったのだと思います。
近年、遠い畑で栽培されたほうれんそうでも、おいしく食べられるようになったのは、ひとえに交配の技術や流通革命によるところです。それは、素直にすばらしいことだと思っています。
一方で、日本ほうれんそうを食べるということは、畑と近いからこそ享受できる「ぜいたく」。そんな「ぜいたく」のある暮らしも、大切にしたいなぁ、と思っています。
水耕栽培も柔らかいですが、また違う味わいなのでしょう。